WORKS

西洋絵画の歴史の文脈において静物画は下位なものだったせいか、器はあまり絵画として好まれてこなかった。少なくとも中心的なものではなく、何かのついでにあるものだった。それを中心に置いてみるようになるのは比較的近年である。

 

器はどこにでもある。誰もが使う。世界の器は実に多様である一方、用途としてはシンプルであり、器だらけの部屋で日々暮らしていると、そんな下位な日常のものの中にさえ、日常性を超えた何ものかが見えてくることがある。もっとも器らしい器とはどんなものだろうと想いをめぐらす時は、日常の後ろにある普遍なるものを想起する時でもある。

 

菅野由美子