ある長編のSF小説で、ひどい兄を持った弟がいた。幼い彼は何度も殺されかけた。のちに彼らは道を分かつが、時空を超えた長い長い物語の果て、意外な形で弟は兄を理解するに至る。それはただのサイドストーリーで見逃されがちながら、実は物語の中心的で壮大なテーマと暗に繋がっていたように思う。おかげでその物語は私にとって愛すべきものとなった。
世界は無駄で無意味そうなサイドストーリーで満ちている。しかしどんなにかけ離れていて無関係に見えるようなことでも、すべては意外な形で、静かに密かに繋がり合っているのだと思う。
菅野由美子