近年は器探しにもあまり出かけられず、ネットで通販やオークションを利用することが増えた。もちろん歩かないと手に入らないものもあるが、今やネットでしか得られないようなものだって多い。Web上で世界のあらゆる国や文化の器がずらずらと並んでいるのを見るのは、なんだか奇妙で面白くて、全部そのまま絵に並べてみたい衝動にかられる。と同時に最近は、文化や時代が不明でルーツもよくわからないようなものに引き寄せられている。なんとなく、自分の絵もそういうものだといいと思う。
器を覗き込むとそれぞれに空気の違う空洞がある。よい器はその空洞が深い。深く静かな空洞のその先には、まだ見ぬ別の世界が待ち受けているようで心が躍る。
菅野由美子